白馬五竜の裏側を支えるシゴトにスポットライトを当てるシリーズ BEHIND THE SNOW RESORT の第一弾は、スキー場の安全を守る「パトロール」のお仕事。
「パトロール」という職種名から想像するよりその業務内容は幅広く、五竜のパトロール隊員からは「スキー場内の何でも屋」という表現が出るほど。主にゲレンデ内の事故対応や傷病者への処置や救助を一時的に行うことで知られますが、そうした事故を未然に防ぐためのゲレンデの点検や安全管理、コースを定めるポールや案内看板の設置、ロープやネットの整備など、まさにスキー場のすべてを管理するシゴトです。
白馬五竜には19歳〜64歳の約15名のパトロールが勤務しています。今回はパトロールの黒メットさん、GANさん、tonbeiさんの3名に話を聞きました(※各隊員の名前はパトロールブログのハンドルネームです)。
五竜パトロールの仕事内容
白馬五竜のパトロール隊員は、スキー場がオープンする1~1時間半前に出勤します。まだ薄暗い中ゴンドラで頂上へ上がり、滑りながらゲレンデのコンディションを確認します。
事故が起きてからの対処も重要なシゴトですが、それ以上に大事なのが事故を未然に防ぐこと。毎日たくさんやってくる五竜のお客様が安全に楽しめるよう、点検をしていきます。
GANさん「スキー場の中で事故やその他のトラブルが起きないように、処置を事前にしておくことがまず大事。本当にいろんなトラブルが起きるので、それが大きくならないような処置対応をしていきます。スキー場の中の何でも屋みたいな役割だと思っています」
それでも事故や怪我人が発生してしまったとき、パトロールは迅速に駆けつけます。怪我人を救助し、応急処置を施すのはパトロールにしかできない重要な役割。しかしそれだけではなく、ゲレンデの状況管理や、気温・風向き・積雪状況・雪質といったコンディションを「情報」としてお客様に伝えることもシゴトのうちです。
tonbeiさん「パトロールの職に就く前は怪我人の対応をしているイメージしかなかったのですが、ゲレンデ状況の管理やインフォメーションの役割、お客さん対応や雪崩の管理なども含め、かなり多岐にわたる仕事があるんだなと思いましたね」
いろいろなシゴトがある中で、毎日行う地道な作業もあります。そのひとつがコースを仕切る「ポール」を立てていく業務。ゲレンデ内の至るところに立っているポールやネットは、すべてパトロールの人間の手によって立てられたもの。一度立てて終わりではなく、雪のコンディションやコース状況によって毎日立てる位置が変わります。
GANさん「ポールはコースの仕切り。このポールがないと自分たちが立ってなきゃいけない。ポールにその代わりになってもらっています。ひたすら毎日、ひたすら毎日、立てています。いろんなところに変わるけど、やっている意義や気持ちが変わることはありません」
パトロールとして働く理由
パトロールとして働くには、熟練のスキー技術がありどんなゲレンデ状況でも滑走できることが条件ですが、五竜のパトロール隊員の年齢や経験年数はさまざま。パトロールとして働くことにした理由や、働きはじめた頃の思い出を聞いてみました。
黒メットさん「消防や海上保安庁に憧れはあって、好きなことを現場でやるシゴトということで、スキー場のパトロールには興味がありました。スキー場はよく遊びに行っていたところだったので。パトロールをやるには技術が必要でしたが雇ってもらえたので、ここで鍛えてもらってきましたね」
tonbeiさん「雪国出身ではないんですけど、スキーが好きだったので雪山で働いてみたいなと思っていて。小さい頃からいつかやってみたいなと思っていたシゴトでした」
GANさん「新人のときの思い出は、初めて背中に十字の入ったパトロールウェアを着たときに『俺がこれ着ていいんかな?』と思ったこと。鏡に背中を映して、やばいなと思ったのを覚えています」
五竜のパトロールとして働くやりがい
五竜のパトロール隊員たちは年齢が違っても仲が良く、チームとして協力しあいながらよりよいスキー場を作っています。長い人だと17年以上働いているスタッフも。シゴトのやりがいを聞くと、五竜ならではの魅力が見えてきました。
黒メットさん「手当した怪我人が後日元気になって来場してくれて、また笑顔を見せてくれると、自分たちのやっていることは間違っていないなと思えます。僕らはパトロールブログをやっているので、それを見てくれている人がいるのもやりがいに繋がります」
GANさん「パト服を着ているとお客様といろんなコミュニケーションが取れる。それが面白いですね」
パトロールの役目は、ゲレンデを良い状態にしてお客様に提供すること。それはサービスやホスピタリティの領域でもあり、お客様とのコミュニケーションが欠かせません。自然の中で大好きな雪山やスキーを仕事にできていることを魅力と感じるスタッフも多くいます。
GANさん「最高にロケーションがいいんで。毎日表情が違うし、何年経っても感動するような場面に出会えます」
黒メットさん「自分は外にいることが好きなので、いろんなところをぐるぐる回ることがシゴトになるというだけでも自分にとってはやりがいです」
tonbeiさん「僕はアルペン出身ですが、フリーライドの人もいれば飛ぶ人もいて、いろんなスキーの形が見れるのは魅力です。パトロール同士は仲がよくて、年の差があっても関係なく子供がいればはしゃいだり、休みの日に一緒に遊んだりもしています」
純粋に「雪の上を滑る面白さを伝えたい」という気持ちは皆同じ。パトロールはその面白い体験の中で危ないことがないように、危険を取り除くシゴトをしています。パトロールの活動が伝われば、よりよいスキー場を作ることにも繋がって、ゲレンデがもっと面白いほうに向かっていく。そう信じて毎日山へ上がっています。
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